「7月時点で内定無し」は決して悲観する状況ではない

|今ある「内定」は果たして来年3月まで有効か

転職・就活ブログでありますので、喫緊の話題から参りたいと思います。
現在就活生の皆さんの多くが3月時点で内定を取れなかったことに焦りを感じておられると思います。後述致しますが統計情報も数値がよろしくない。

しかし現時点で内定を得ていることで果たして安心と呼べるのでしょうか。私は違うと考えます。
企業から今年得られる内定については、

  • 10月ないし11月時点で取り消しが無い、あるいはその時期に内定を受けたものが最終的に確定したといえる
  • 7月〜9月上旬に出される内定のうち取り消しが生じる可能性がある
  • 取り消し可能性から、今内定があっても就活は夏以降10月末までは継続するべき。

理由は企業が年度予算を立てるタイミング、そして現在のコロナ流行に伴う業績不振の影響です。

先に述べさせて頂きますと、残念ながら長引く不景気から企業心理は極めて用心深くなっており、特に採用方針については付和雷同型で、社会情勢や景気の動向に極めて敏感に反応します。
言い換えればすぐに内定取り消しや採用中止を決めます。

この点は今後も稿を変えて折に触れ述べさせて頂きますが、特に現在のような非常事態といったコメントがついた場合、状況によってはパニックに近い行動パターンとなります。

誇張でなくトイレットペーパーを買い占める人々と同様の心理状態になると思って頂いてほぼ間違いないかと。
そういった可能性があると前提されるべきと思います。先ずは足元の状況を述べさせて頂きます。

|過去実績と6月末時点での内定率の比較

既に内定率の低下や取り消しが報じられております、調査によりバラつきあるものの恐らく信頼性の高い情報をベースに以下と読み取れます。

  • 7月1日時点での内定率は全体で60後半〜70%(6月1日時点:50%前半)
  • 前年同月(2019年7月時点)の内定率は約75%であり▲5〜10%
  • 理系は男女問わず70%台と昨年比で数%減にとどまるのに対し、文系は男子で60%弱(前年比で約▲10%)、また女子は50%半ば(前年比▲13%以上)に留まっている。

出典(参考):
(株)リクルートキャリア 就職プロセス調査(2021年卒)
(株)マイナビ/(株)翔泳社(HRzine
※リンクフリーの可否不明のため以下アドレスをコピーの上ブラウザに直接ご入力下さい。

  • (6月調査)https://www.recruitcareer.co.jp/news/pressrelease/2020/200605-01/
  • (7月調査)https://www.recruitcareer.co.jp/news/pressrelease/2020/200707-01/
    https://hrzine.jp/article/detail/2265

(ご参考)

  • 1999年時点の内定動向は夏時点で40%程度の内定率、最終的に就職率56%(正規・非正規合わせ)
  • リーマンショック時(2009年3月)の就職率:約68%

|最終内定率は最悪80%台を切る可能性

ここ数年90%台で推移した内定率ではありますが、コロナ流行と不況の度合いによるものの2020年度の最終的な内定率は全体で9割に至らず、昨年比▲10%程度の80%台、最悪70%台で終了するのではないかと考えております。


理由として以下3点が想定されるのではと。あくまで個別事例ですが周囲のお取引先に伺ってみたところほぼ「採りたいが今は業績見通しの様子見」「出した内定をどうするか検討中」でした。

(ポジティブ要素)

  • 企業の採用活動の一時中断や中止、また非常事態宣言による活動自粛により、5月末時点の内定率は最も悪かった2000年度卒(つまり1999年5月の活動結果)と近似していたものの、6月は改善し既にリーマンショック時の最終内定率(68.8%/2008年3月)を超えている
  • 2000年氷河期ならびにリーマンショック時と異なり深刻な人手不足という背景

(ネガティブ要素)

  • 本年の景気減速の深刻化に伴う「採用活動の中止」「内定取り消し」が生じ最終的な内定率が90%に到達しない可能性

(今後注目するべき情報)

  • 7月後半に上場企業各社から発表される4〜6月の業績結果

現時点ではコロナ不況の内容は商取引や人の移動など経済活動が不活発であることを主要因としており、破産の連鎖による金融市場の破綻には未だ至っておりません。


もし連鎖破産、つまりリーマンショックの再現ともなれば内定取り消しも含めて内定率は6割台もありえましょうが、2008年の教訓から日本も他国も金融市場に対し底無しと言えるレベルで資金投入をしていますので、金融システムのクラッシュは当面可能性が低いと思われているようです。


いろいろ言われている「一人10万円」の特別定額給付金も、私自身は良い事と思っています。

但し前述の様子見の姿勢が今後どのように変化するかは第一四半期(4〜6月)の業績結果と企業の発表する見通しに依るところ大であります。

|足元の内定は取り消しの可能性あり

しかしながら学生の心情からすれば現時点での未内定、または内定の確かさについては大変に不安なこととお察し申し上げます。


ここまで頑張って内定を得た皆さんには本当に申し上げづらいのですが、会社側にあるものからいうと上述の通り今ある内定は取り消される可能性があります。お疲れとは思いますがまだ就職活動は継続されるべきです


言葉を変えれば不確定要素が多い現在、未内定は必ずしも悲観すべき状況とは言い切れません。
必要なのは「来年3月まで確実な1件の内定」だからです。

現在の採用計画は本年3月時点で決まっていたもの、つまり昨年末あたりまでの企業業績や景気動向を反映したものであり、特に3月末以降の社会・経済混乱を反映していません。
冒頭述べたように突然の方針変更という可能性がございます。

|今、企業は判断がつかない状態

事業環境の急変に対し、各企業は本年度(2020年)の下期事業予算ならびに来年度(2021年度)の見通しを修正し始めております。

結果として採用計画の見直しに着手する企業は増えると思われます。
もう少し詳細を申し上げますと現時点の採用計画に影響する要素は以下となります。

  • 国内の上場企業のうち7割弱が3月決算であり、今年6月時点の採用計画は本年1月時点で計画した事業予算(2020年3月に社内公示)とともに決定したもの
  • 本年3月中旬に本格化したコロナ流行に起因する業績悪化は上記の事業計画・予算、ひいては人事・採用計画には反映されていない。
  • 国内の上場企業のうち7割弱は3月決算であり、そうでない会社その動向を見て事業や採用計画の見直しを行なっている
  • 今ほぼ全ての会社が事業予算の見直しに着手しているが、通常でも8月末〜9月上旬に最終確定(9月末に社内公示)するものであり、10月以降で第2のコロナ流行が懸念されるなか、予算策定は更に難しくなっている。

ではこれで採用中止かといえばそうもいきません、人手不足は深刻であり来年採ればよいと言い切る自信のある企業も今のところ少ないです。

それが7月時点で60後半〜70%の全体内定率の根拠です、これだけの急激な不況で且つ先々の予測がつかない場合、もし働き手が余っている社会ならばとっくに採用終了で内定率50〜60%がいいところでしょう。

逆に言えばその会社にとって不況がより厳しく、且つ長期化するとの見通しが持たれた場合、採用中止に至らざるを得ません。
実際転職市場では、募集を中止する企業が増えています。即戦力の中途採用を止めるとは、それだけ現時点は厳しい経営状況にあるとご理解頂けるかと思います。

学生諸氏は一定期間の研修が必要であり採用後ただちに収益化できません。新卒学生を採ろうという会社は、来年以降自社の業績がどうなるかを見ているのです。

現在内定を出していない、または採用活動を一時保留している企業はここ数ヶ月の業績悪化に直面して採用活動を継続すべきか判断に迷っている状態です。
また内定済みの会社もこのまま正式採用で良いのかと不安を持っている会社は多いのです。

こういう状況では、現時点で会社が出している内定・内々定にあまり大きな期待をすべきでありません。では今後の企業の採用動向はどのように行われていくのでしょうか。
全般としては以下のスケジュールとなるものと思われます。

  • 8月中旬まで、つまりギリギリまで景気動向を見極め8月末〜9月初旬に事業計画を修正し9月末に確定版の下期予算を作成
  • 上記に合わせ9月に人事・採用計画を再検討し方針を確定する

|内定が確かなものとなるのは11月以降

つまり9月末時点は大方の企業が自社に新人を採用し2021年いっぱいを掛けて教育するだけの体力があるか否かを判断し終わっていることになります。
上場企業には多くの取引先がありそれらの企業も自社に売り上げをもたらしてくれる顧客の状況、即ち修正された事業計画・年間予算を見て採用方針を修正するでしょう。

逆にいえば特に現在のような状況下では9月末までは全てが変更される可能性がある、つまり9月いっぱいはそれまでの採用計画または既に出された内定は変更される可能性があるということになります。

ひるがえって企業が継続できると決めた、つまり学生にとって安心できる採用情報・内定は以下と申せます

  • 10月末時点で取り消しされない内定(大手・中小問わず)
  • 10月前後で条件を変えて選考が継続(大概は就職難と観察して求める人物像が高めになる企業が多い)

|7〜8月の就活への労力は3月比で少なく

では直近の活動は具体的にどうすればよいのか、上記の企業動向と見聞した事例から申しますと、既に内定有りまたは未内定の方を問わず以下のようにご留意されてはと思います。

  1. 今夏は3月時点の半分程度に就活の負荷を低減する(活動時間減・企業数を絞る)
  2. 卒業に必須となる学業条件(単位・レポート・論文)の作成を進めておく
  3. バイト等で10月以降の活動資金を貯める

(項目1)就活の負荷(時間)を減じる

未内定の方は不安でありましょうし、内定をお持ちの場合も今年に限っては予備の内定を得ておきたいと思われるとお察しします。

しかし前述のとおり企業の方針が定まらない7〜8月の活動は、仮に内々定に至っても取り消しの可能性があり、またこのような社会状況ですと企業側も状況を確認したいがため気を持たせつつ採用活動を引き延ばす場合すらあります。

受ける企業は第一位の本命かあるいは滑り止めのいずれかに限定し、就活に費やす時間を減らすべきと思います。

また地味な話ですが夏の就活は非常に気力と体力を消耗します。それが必要なものであってもこの時期に激しく動くことはその後に少なくない影響を生じます。
不必要な消耗を避けつつ、むしろ一度落ち着いて状況を整理することが必要な時期と思います。

(項目2)卒業に必要となる要件は今夏にめどをつける

単位未達で卒業不可は毎年出る事例ではありますが、特に今回のような混乱期は侮れません。
予定外の就活に注力せざるを得ない場合、真面目に課題をこなす学生さんでも単位不足やレポートが間に合わない等、卒業出来ない事例が生じます。

今年は11月になっても就活を行う可能性があります、出席日数等も含め一度卒業要件を明確に把握した上で、今出来る必須課題等は完成させておかれることが必須と思ってください。

個人的体験ですが私もなるべく単位を取り課題も事前に済ませて就活に臨みましたが、訪問が多く最後はギリギリでした。不景気とはそうしたもののようです。

なお予想外の就活による出席日数の不足や課題未提出が続いて卒業が危ない場合、この7月時点で指導教授に相談されることを強くお勧めします。

卒業条件というものは、状況が悪いほど諦めてしまったり根拠なく何とかなると思いたくなるものですが、指導教授や必要単位のゼミの教授にこれまでの就活の経緯と現状を説明した上できちんと頭を下げて詫び、その上で何とかしたいとはっきりお願いすれば、余程のことがない限り条件を出してくれます。

但し8月や9月になってからでは遅いです、連休等もあり時期的に教務課等の管理部門との調整もできなくなるので教授に仏心があっても物理的に助けられなくなります。

そもそも卒業しないと内定を得ても就職は出来ません、当たり前のようですが就活に熱心になると意外に抜かる部分です。どうかお忘れなきよう。

(項目3)バイト等で10月以降の活動資金を貯める

もし不幸にしてリーマンショックレベルの不況となった場合、10月以降の就活は文字通り「足で稼ぐ」ものとなります。

ご実家をあてに出来ない、また奨学金等があるため活動資金が不安という場合、企業の活動が不活発であることが予想される夏をバイトに充て、今のうちに活動資金を得ることは重要です。懐が寂しいと何かと萎縮し易いものですので。

お恥ずかしい話ですが、私自身も氷河期時代の就活は数を回ったものであったため、夏のバイト代は全て会社訪問・面接時の移動費用に消えました。10万程度はすぐ無くなると思ってください。

またこれは本当に非常事態の場合ですが、もし大規模且つ長期化する不況となる場合(今回その可能性は大変高いです)、バイト先にそのまま社員として在籍するという手段もありますので、その点でも重要です。

無論一時的な避難案ですが、その後転職する際「現在無職」と「勤務中」では天地の差があります。
今後詳しく触れますが、くれぐれも「無職で卒業」「就職浪人のため留年」は避けてください。

紙数が尽きましたので、改めて。

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