入社してはいけない会社の共通点・面接は「尋問」

面接は嘘を見破る場所ではない

コロナウイルスの流行でDX(デジタルトランスフォーメーション)が急速に進むといわれています。面接を含めてウェブ採用が始まりました。
やはり非常の刻です、オンライン面接とは。
採用やコミュニケーション分野の専門家が早速説明をしてくれています。

幾つか読んだ中で印象的な記事があったのでご紹介致します。プレジデント社の『面接でヤバい人は「たった2つの質問」で見抜ける!– ウェブ採用に適応できる企業は優位 –』というものです。

実をいいますと途中から思わず笑いながら読んでおりました。

一言で申せば「面接者の嘘を見抜く方法」です。
率直に申し上げて採用面接ではなく取調べ方法の解説でオンライン採用とはあまり関係がありません。付け加えるならばこのテーマは20年以上前からあって正直古いです。

なお採用担当向けの解説書や記事には似た内容が多いのですが、人事のコンサルタント諸氏におかれてはよほど人に騙される職業経験をした方が多いのでしょうか。

入社してはいけない会社は隙をつくことだけしか考えない

この記事を敢えて取り上げたのは、採用面接とは面接者の隙を突いて本音を引き出すこと、と考える人や会社は少なからずあると申し上げたかったためです。

入ってはいけない会社に共通する特徴です。

採用ご担当が常識人にして仕事においても一定の知見を持っている方ならば、面接の基準はそれまでの仕事を通じて得た対人コミュニケーションの経験に基づくはず。
注目する点は以下の3点のはずです。

  • 相手の話を聴いているときの面接者のたたずまい(落ち着いた人物かどうか。姿勢/静かな視線から)
  • 質問に対する返答内容の論理性(短く要点のみ/更に問われた際、話題を発展させる会話・説明力)
  • 話し方や言葉遣い(落ち着きや品性の有無)

基本的な問題点、つまり自分勝手/攻撃的/承認欲求が異常に強い/コミュニケーション能力が低い/責任回避/無気力/論理力が低い、等は上記3点いずれかにおいてなにかしら感じるところがあるはずです。

しかし冒頭の記事にあるような面接方法への支持が結構あります。例としては圧迫面接といったものです。

想定外のトラブルに直面したときに人は隠した本質を見せる、という理由に基づいており故意に驚かす、または脅してみるという点に一定の支持があります。

私は人と会ってお話をさせて頂く仕事を20年以上続けてきましたが、慌てた様子から内なる人間性を感じとることはかなりの人物眼がないと難しいと思います。
無論それだけの知見がある人はわざわざこんなことはしません。

そもそも相手を深く理解したい時、人は互いに落ち着いた状況で話を聴きたいと思うのではないでしょうか。

考えてもみてください、仕事上の重要な交渉のとき相手に揺さぶりを掛けると有利に働くからとサプライズを仕掛ける人がいるでしょうか。

「ビビらせて隙を突こう!」ということですよね。
そんなことを思いつく担当が居たら(想像もつきませんが)正気とは思えないので外れてもらいます。

文字通りテレビの見過ぎです、それが採用面接となると「嘘を見抜く方法」として真面目に受け取るようになるのです。

「人のたたずまい」「品性」という言葉で何かをイメージ出来ないようなら、失礼ながらそもそも採用担当には向いておられない。
そういった人物や面接方法をよしとする会社です、避けるべきです。

入社してはいけない会社が求めるのは「従順さ」と「ストレス耐性」

SNSで拡散されるのを恐れてあからさまな圧迫面接は少なくなりましたが、未だこういった面接手法がかたちを変えて現れるのは問題ある企業からの一定のニーズがあるからです。

圧迫面接で選考が先へ進む人は、実は相手の無礼を認めて素直に謝ったりしてしまうタイプです。むしろ平均以上に礼儀正しく真面目な性格と言えます。

そういった方はまともな会社の面接を受けているという意識ですから、計画された無礼とは考えず知らないうちに自分が非礼を犯したと思ってしまいやすい。

これこそが入ってはいけない会社が求める資質です。

問題を抱えている会社ほど、「会社への従順さ」「ストレス耐性」を強く求めます。

会社として問題を解決することには注力せず、代わりに何があろうとも自分の責任として心に溜め込み、我慢してくれる人材を採ることに力を注ぎます。

誤解無きように申し上げますと、社会人である以上ときに自分を抑えて相手を立てることは対人折衝における重要な能力です。
またこんにちの社会で責任感とストレス耐性の両方を備えた人はそれこそ衆に優れた人材といってよいと思います。

ただ優秀な企業が組織の改善によりストレス要因を無くそうとするのに対し、問題のある企業は組織の問題は放置し、個人に対し際限のない我慢を求めます。

業種や規模に関係なく、問題を抱えた「入ってはいけない会社」に驚くほど共通する特徴です。

「やる気」と「自己評価の高さ」は表裏一体

また避けるべき会社の面接によくある質問に

あなたの「長所・短所」「良い点・悪い点」を挙げてください

というものがあります。

記事に笑ったのはウェブ採用の解説といいながら、実は不意打ちを仕掛けて様子を見ることや、長所・短所の質問といった古典的手法の紹介だったからです。

ここはかなりいろいろな問題をはらんだポイントなので改めて深く取り上げますのでここでは簡単に。
考えてみてください、

あなたの長所はいついかなる状況においても「長所」ですか?
また短所はどんなときも常に「短所」でしかありませんでしたか?

長所・短所という質問に意味がない理由です。

人の性格や行動を長所と短所で明確に切り分けることはできません。同様に仕事や家庭、人間関係において、物事を良し悪しだけで評価・判断することは困難です。

会社に限りませんが長所・短所という区別自体が人間性への理解があまりない証拠です。定番にして採用に失敗する会社に共通の質問である理由です。

「長所・短所は意味がないので聞かない、自己分析した特徴を聞く」と仰る大手企業のハイエンドのマネージャーには何人かお会いしたことがあります。

そういうマネージャーの皆様は「この仕事について、お前はどう考えるか」という問いかけを通じて部下の状態を毎日チェックしています。いってみれば毎日面接なのです。

長所=短所・過剰になればどんな資質も悪影響になる

会社経営について私はよくわかりませんが、組織や人を管理する難しさとはひとつの価値観だけで割り切れないからこそ生じるのであろうことは漠然と理解できます。
そうでなければ完全なルール(そんなものがあればですが)を作っておしまいのはずです。

はかない自己評価をたよりにやる気を奮い立たせて努力し、またやる気の高まりが結果を生み自己評価が高まることで更に努力出来る。
ここはきわどいところで自己評価が過剰になれば悪影響も生じる。

長所=短所なのです。

記事は自己評価の高さには潜在的な問題ありとのことですが、新興宗教の信者以外で自己評価は低いけれどやる気十分という方には会ったことがありません。

「自己評価は高くないが、やる気はある」というちょっと分裂気味の人物像になってしまいます。
ここにこの手の質問や面接手法を好む企業の異常さが現れています。

  • 自己評価は低く   (=出来て当然であるから自分の現状は常にマイナス査定)
  • やる気は高く    (=評価されずとも努力する)
  • ストレス耐性が高い (=現状に文句を言わない)

念のために申し上げますと私自身は承認欲求や上昇志向でギラギラしている人が苦手です、しかし会えばわかるキャラクターです。

興味をひかれ同誌の「採用・面接」タグの記事をいくつか見ましたが似たようなものが多い。求める会社がそれなりにあるということです。

避けるべき会社が実施する採用を知るすべとしては読む価値がありますが、こういう採用手法をとる会社をどう呼ぶかは本稿をご覧頂いた方のご想像にお任せします。

しかしコンサルたるもの顧客がここまで人間不信の会社であるならば、いっそのこと新規採用ではなく刑務所の作業所へのアウトソーシングを勧めては、と思ってしまいました。
働き手の自己評価は低いでしょうし福利厚生費不要で「厳重な労務管理」もしてくれます。

DXも所詮は手法の話です、問題ある会社の体質はそうそう変化はしません。改めて触れさせて頂きますがウェブ採用やオンライン面接でも人物を確認するポイントは同じです。

かつてこの手の会社にいたこともあり、いい会社と悪い会社の特徴は昔から変わらないなと思うばかりです。

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