◆ポイントご紹介の前に・聞きにいけば確実に情報は厚みを増す
まず最初にこれだけは申し上げたい。
ハローワークで利用すべき最大の特徴は「情報は全て開示」です。「都合の悪いことでも聞かれなければ答えなくていい」がままある就活・転職分野にあって隠すということがない。
その代わり分析がない、生の情報が出てくるだけ
民間の得意はこの情報を分析・整理して見せてくれることです、代償としていい情報が若干強調されます。
前に申し上げたとおり、この性質が不況になると少々強まる。
言い換えればハローワークでの就活は、というより実は就職活動全てがそうなのですが「自分なりの選び方が問われる」といえます。
自分にとってプラスとなるもの/プラスにならないものは何なのか。
数あるデータ・条件のなかから突きつめ、明確にしなければなりません。
これが結構難しい。
不況時は特にそうですが、就活・転職は自分に合った選び方ができるかどうかが一番重要です。
これは給与が高ければよいという単純な話ではありません。
逆にデータを充実させ入念に検討すれば、より良い選択肢は必ずあるということです。
◆メリット(具体的なポイント・5点)
ではハローワークの活用ポイントを具体的にあげさせて頂きます。大きくは以下の5点。今後一章づつご紹介申し上げたいと思います。
その1:過去の求人実績を全て開示してくれる
その2:地元密着型
その3:その場で担当者に連絡
その4:予約なしでいつでも相談可能
その5:心身のネガティブな要素について隠さず相談できる
◆その1『過去の求人実績を全て開示してくれる』
ここにつきるといってもよい程の最大の利点です。記録に有る限りの「求人実績」全てを教えてくれます。
ハローワークにある端末から打ち出した求人情報を持って相談窓口で聞けば担当者もごく当然のように教えてくれます、民間との決定的な違いです。
数年分の情報、具体的には
募集年次
各年次での募集職種・人員・正/非正規
応募者(性別・年齢)
採用実績
です。これらについて5年分は確認してください。
その会社がどんな人物像を求めているか、そして混乱しているかどうかが一目に分かるとても重要なデータであり「行くか戻るか」もうここである程度判断できるといって良いかと。
応募して失敗した、あるいは入社後何らかの不満をお持ちの方に聞くとほとんどの方がこの点を注意深く確認していません。
繰り返しますが欠点は、「データはくれるがほとんど何の分析もしてくれない」ということです。
無論相談員によっては的確なアドバイスを下さる方もおられますが、民間とは異なり立て板に水のごとき滑らかな説明は稀です。
ここで冒頭述べさせて頂いた自分の尺度が必要となります。
もっと言えば仮説でしょうか、「こういう実績であるからその会社の事業・社内の雰囲気は良い/悪いのでは」という自分なりのストーリーです。
この部分は自己PRの作成や面接時の対応に大きく影響しますので、その点も考慮してみて頂ければ。
◆過去の求人データから見るべきポイントとは
では上記のデータから具体的に何を観て、どんな仮説を立てるのか。
比較軸としては
業界/会社規模/事業内容
に対して
求人数・頻度/給与水準/非正規の割合/女性の採用実績などになります。
これらを自分が志望する職種以外も確認してみることでいろいろなことがわかります。
幸いハローワークでは職種を問わず全て提示してくれます。
【1】まずは採用数/全従業員数を比較
最重要ポイントは全従業員数に対して『何年ぐらいで』『どの程度の人数を募集・採用してきたか』という履歴です。
もうここでその会社が「白いか黒いか」がはっきり見えます。
例えば現時点で総従業員数が100名程度の企業において5年間で合計10人の求人・採用をしていたとします。部門は問いません、全て合算です。
これは「5年で10%の社員が入れ替わっている」ということを意味します。
年間たった2名(10名/5年)の採用である、とするのは間違いです。
人件費はとても重いコスト項目のため、よほど事業が好調であっても企業が5年間で10%以上も社員を増やすことはありません。
つまり辞めた分を補充している、明らかに離職率が高いことになります。
この時点でアウト、ほぼ間違いなく半ブラックな職場か少なくともマネージメントにしくじっている会社です。
不十分な引き継ぎ、そして混乱した現場に放り込まれ入社後苦しむことが目に見えています。
またその会社が社歴数年の新興企業ではなく20年以上続いている会社であるならより深刻です。
企業の寿命は20年から30年という説がありますが人事は特に当てはまります。
人材管理面、ことによると経営そのものが悪化し続けている可能性が高い。
企業とは本来社歴が長い会社ほど社会的信用を重んじる傾向があり、給与はさておき雇用面は安定しているはずだからです。
私は法人関連の仕事をしておりますが、大手はさておき中堅から中小企業において員数増は定年退職を考慮しても本来5%未満であるべきだと思っています。
問題を抱えた顧客では上記に収まらず採用しては辞めを繰り返す場合が多いです。
【2】事業内容と自分の「職歴」の差
次にそれまで採用された事例やその会社の業務内容・年齢構成に対し、ご自身の職歴とどの程度の差があるか。
それまでの採用実績にある年齢と明らかに異なる年齢層を希望している場合、注意が必要です。
人手不足が言われるようになって増えましたが、それまで即戦力となる比較的高年齢のみを採用し続けてきた会社がいきなり若い人を採ろうとする案件が増えました。
こういった会社は教育体制が無い可能性が高い、というよりまずありません。
逆に20代後半〜30代中心で採ってきた会社が突然40代以上を入れる場合(経験者のスキル欲しさによくやりますが)、会社の雰囲気に馴染まないという可能性が高い。
【3】非正規社員の求人状況
また職種や求人数に対する正規/非正規の別は会社の雇用に対する考え方を端的に表します。
本来専門職であるべき業務において非正規雇用をした、あるいは採用はしなかったが募集はした、という実績はかなり危険な兆候です。
具体的には以下のような事例です
(1)非正規雇用の比率が多い、加えてその給与水準は相場より安い
こういった会社は社内での給与格差が大きいため人間関係は常にギスギスしています。
非正規ですから離職率(というより解雇率)も高く業務引き継ぎは常に不完全。
こういう職場では例外無く新入りに対し厳しく接します。
どうせすぐ辞めると思っているので上手くいかないことは新人の責任にする気質が蔓延する。
(2)専門技能を非正規(または法外に安く)雇用しようとしたことがある
具体的に例を挙げると
TOEIC700点以上、海外業務・交渉の経験あり・契約社員(または正社員:年収450万)
設計開発経験5年以上、回路設計スキルあり・契約社員(または正社員:年収400万)
といったもの。
本来高度な職能が必要な分野に安さを求める会社は、仮にみなさんの志望がその他の職種であって、かつそれが相場通りの条件であっても避けるべき。
そういった会社の多くはもし状況が許せばすぐに賃金引き下げかリストラし易い雇用契約にしたいと志向しているからです。
なお業務内容もひどいものが多い。
相場外れの給与による採用を続けた結果として、そもそも能力に乏しい人材を集め続けた結果、業務は荒れている場合が多い。
近年の人手不足の影響を大きく受けている企業でもあります。わずかに残っていた使える人材も転職需要に応じて辞めてしまい、業務に少なくない支障が生じています。
慌てて給与を相場並みに変更した会社はかなり多いです。つまり現時点の条件だけで判断すると間違える。
現在の求人条件だけでなく過去のデータを注意して見ることがいっそう重要である理由です。
【4】正社員間での賃金格差が大きい
技術などの専門職は相場通りか比較的高いが、営業職は相場よりかなり安い、等。
その会社にどんな仕事が集まるか考えればお分かりかと。よほど業界でも強いポジションや商品を持っていない限り、舞い込む仕事はとんでもない内容が多い。
お給料に「我慢手当」が含まれている典型例です。
また管理職候補の募集があれば当然あわせてご覧になってください。
一般社員に対して大きく変わらない場合は当然ながら「名ばかり管理職」の可能性大です。
なお以前ほど強制出来なくなってきていますが、いまだ管理職には残業がつきません。
名ばかり管理職のいる職場は例外なく荒れます、マネージメントはなされないからです。
またそれが大手企業の100%子会社でありながら給与条件が相場ギリギリかそれ以下ならば、少なくとも出向者以外の社員は全くやる気がない状態であると想定したほうがいい。
出向者とそれ以外の給与格差が大きいため、モチベーションを引き出すことは不可能だからです。
【5】女性の採用実績
事業内容に対して女性の採用増減は様々な推測が成り立つ内容です。
正直言えば日本企業、それも規模が小さくなるほど男性を採用する傾向が強い。
私はジェンダー論についてなんらの定見もありませんが、言えることは男性優位の環境でキャリアを積んだ女性はその分野でかなり有能であるということです。
ハンデがありながらも実力をつけたのですから。
嫌な言い方かもしれませんが、企業としてよりお買い得な採用を志向するなら当然検討の対象となるはずです。
逆に言えば過去のデータにおいて女性の採用実績が無いか極端に少ないなら、その会社の保守性は機能不全のレベルに近づいている可能性が高い。
たとえ男性であってもそのような会社で業務実績に対し正当な評価を期待出来るでしょうか、恐らく無理です。
◆新卒就活でも内定先のハローワークのデータを確認すべき
上記は転職者だけのものではありません。
実際に学生の知人にはお勧めていますが内定を得た、あるいは真剣に検討している企業について本社所在地と勤務地のハローワークでデータをご覧になることは大変重要です。
言ってみればフィーリングではなくデータによって「入る会社の離職率を調べる」に等しいですから。
ハローワークの端末で志望または内定した企業を検索し、窓口で求人実績を聞いてみてください。
殆どの企業は何らかのかたちでハローワークに「足跡」を残しています。
そこにある実績は新卒の新入社員の皆さんがこれから経験する内容です。
会社説明会や訪問・インターンでは見せない現実を実感できると思います。
◆就職先が無くても「ダメな会社の求人」は排除
なお上記に述べたような会社は珍しくないし、そもそも条件の良い仕事は無いので仕方が無い。
言う通りに選択肢から除いたらどこにも入れない、とお感じになるかもしれません、全くその通りです。
ただあえて申し上げます。
こういった「ダメな会社」が多いからこそ転職して不幸になる方が多いのです
お気持ちはわかりますが可能な限り注意深く排除しなければ。
不況のなんたるかは存じておりますので、応募して落ち続ける虚しさや無職の恐さも数多く実感しております。
しかし何度も自分で繰り返して、あるいは人からお話を伺って分かるのは
ダメな会社は入ってもいいことがひとつもない
ということです、本当に何も無い。身を削るだけです。
これは全てのダメ会社に通じる真実です。ある期間は諦められるのですが最後は必ず後悔します。
目の前に納得できる求人が無くとも妥協せず絶対にお避けください、数年後(ここが怖いのですが)、時間と努力の無駄であったということに否応無く気づかされます。
このような手順を回すことをお考えになって見てください
手順1:候補を集める(ハローワーク・人材紹介業者)
手順2:明らかにダメなものを排除する
手順3:残った候補の注目点を書き出し優先順位をつけてみる(あるいは手順1に戻る)
手順4:各会社向けの自己PR資料を作る(思い通りの資料にならない場合、一度手順1に戻る)
何度かこのようなサイクルを重ねるとちょっと違う展開が見えてきます。冒頭に述べさせていただいた自分なりの判断基準が定まっていく過程でもあります。
このサイクルが(あまり好きな言葉ではないのですが)自己分析/業界研究・会社研究というものです。
自然と自己PRや面接のスタイルが定まってきます。
自己分析・業界(会社)研究 = 自分なりの判断基準を明確にすること
なのです。
紙数が尽きましたので「その2」以降に関しては次回に述べさせて頂きます。
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