就活・転職においてどの情報を元に活動するかはとても大事です、文字通り当落を分けます。
今大変な不況ですが、経験上こういう時期に民間の人材紹介業は全くあてになりません。
ハローワークしかございません。めったに断言などするものではありませんがこれは安心して申し上げられます。
◆営利企業は不況になるほど高収益案件しか扱わない
まず大前提として
- 民間の人材紹介業は営利追求の企業
- ハローワークは非営利団体
という決定的な差があります。
企業は収益の上がらないことはしない、というよりできません。
また他業種と比較しても、人材紹介業は特に効率を重んじる気風がある業界です。
実際に今そうなっていますが、不況時には年収の上下を問わず求人案件そのものが減ります。
企業としては数が減ったなら一件あたりの売上(利益)を高めるしかない。
一方で人材紹介業の収入源は2つ、
(1)広告掲載料
(2)仲介手数料(成功報酬・紹介案件の年収数%分を手数料とする契約)
です。
つまり(1)は掲載数が減って期待できない、ならば(2)の仲介手数料について単価を上げることが勝負となりますが、不況時の募集案件は年収額が目立って下がる。
考えたら厳しい商売です。
そのため転職エージェントなど担当者の立場では、不況時はより高年収の事案以外扱う意味がなくなるのです。
なおここでいう「高年収」とは全労働人口の数%からせいぜい10%程度が該当する案件のことで、普通人は関わるだけ無駄です。
では新卒採用はどうか?
同じく求人数が減りますし、そもそも転職案件と異なり職歴がないため学生の能力把握ができません。
現在のような市況では紹介しても内定取り消し等のトラブルもあるため関わりたがらない担当者も多い。
別に不人情でもなんでもなく、民間の人材紹介業は不況下においてはよほど条件の良い人(案件)以外は力を入れることが出来ないのです。
◆民間で年収が上がる条件は限られる
また効率良く紹介・採用実現をするため、言い換えれば初回〜5回程度の紹介で仲介料を確保するため、紹介時点で提示する年収はあなたの現状から何割か下げたものになります。
だいたい▲20%程度と思っていただければ。
つまり現年収800万の方には650万ぐらいで、現年収600万なら450万ぐらい。現在450万ならば350万ぐらいで。
たぶん転職活動をされた方ならば、上記の数値はかなり実感されていると思います。
それ以上では紹介しません、できる限り初回で採用されるためです。
登録しているにもかかわらず長期にわたって転職エージェントからの紹介が無い方は、ほぼ全てが年収面での減額アドバイスに従わない人です。
なお上記のような提示を受けて落胆する方が多いですが、あくまで業者側の都合です。
早期転職を実現させることが唯一の理由でありますから、ご本人の能力とはあまり関係ございません。
年収は一度下がると実績になります、リカバリーには多大な努力を要する。
嘘をついても源泉徴収票でバレます。
ですから急いで転職・就職する必要がない限りご自身の希望年収で探されて全く問題ありません。私もそうして参りました。
なお人材紹介業者の紹介において年収が上がる条件は
- 年齢が20代後半〜30代初
- 男性
- 正社員のみの履歴
- 転職経験は1回のみ
平たくいえば「全てにおいて平均的な履歴、かつそれに見合う社会人経験を経ている男性そして今後長く使い倒せる年齢の人」です、実は職能・スキルの類はあまり重視されません。むしろ変わった経歴は疎まれます。
書いていて嫌になる話ですが現実です、不景気においてはこの条件の傾向が強まります。
民間業者の名誉のために申し上げれば、彼らの顧客たる日本企業においてそういう人材を求める傾向が強いということです。
真面目な話、企業がもし「お得な中途採用」を本気で考えるならば女性の採用などもうちょっと検討してもよろしいのではないかと思うのですが。
正直言って男性優先の日本社会においてキャリアを積んできたということ自体、相当な力量がある証拠と思いますが何故か採りたがらない。
なおこれは余談ですが、大手の人材紹介業者が自社の社員を中途採用する場合、転職履歴の条件は上限2回までです。
3回以上の場合たとえどんな事情があっても普通採りません。
その点ハローワークではそのような内部基準はありません。利益追求もコスト低減の必要もないためです。
◆ハローワークは『守りの転職・就活』に最適
昔は「職安」今は「ハローワーク」。文字通り地味そのもの、年収1000万越えの案件など確実に過去一度も扱ったことはないと思います。
やり手エージェントはいない、データの解説もしてくれません。
その代わり不況下でも相談者を最大限助けようとします、また実績を高めるために半ばブラックな企業を押し付けることもない。
ここが不況下では普通人にとって一番重要なのです。
活動期間が限られるなかで地味でも安全確実な抑えが欲しい場合、安心して守りの就活ができます。
不況時の転職活動を続けてきたものからすると、
「半ばブラック企業」と
「そこそこハードだけど年収の高い会社」
の境界線は大変グレーです。
転職する時は大なり小なり現状よりハードな仕事を選ぶ傾向があります。
頑張らないと年収や待遇はよくならないから。
あるいは不況下で仕事に就くには多少のことは我慢しないといけません。
気をつけなければならないのは民間業者にあっては概ね 〜不況であればあるほど〜このグレーな境界線がブラック寄りになりがちということです。
紹介実績を増やさねばならないからです。
しかしほぼ全ての転職者にとってみれば白黒の判断はつきません、給与水準と条件面に関する都合の良い説明で納得してしまう。
ミスマッチも無論多いですが、過去20年ぐらい失敗談を見聞きして自分の経験と比したとき見えるのは、良い話に乗せられてしまった人が少なくないという実態です。
しかし転職者が転職のプロである必要はないのでこれは責められません、もし言うとすれば危険を避ける分析力・判断力があればよかっただけです。
その点ハローワークは安全です、判断は自分ですることに変わりはありませんが少なくとも「黒い案件」を積極的に推すことはない、また問題点となる履歴は提示してくれます。
労基がらみの事案がある企業によってはそもそも募集を取り扱わない。そこまでいかなくても、例えば会社都合の退職履歴があると求人出稿は難しくなります。
◆アンダー600万以下の良案件はハローワークと民間で数は変わらない
なお冒頭「年収1000万越えの案件はない」と書きました。しかし600万以下の案件ですとそこそこあります。
ここは好不景気に関係ない部分ですが、実は年収300万以上600万以下ではハローワークと人材紹介業者で抱えている案件の数に大きな差はありません。
好景気ならば増え、不景気ならば同じように減る。
そんなことはない、と言われると思います。検索すると「ハローワーク 嘘」とかどんどん出てくる。
私も長くそう思っていましたがよくよく見ておりますと離職率が高く頻繁に求人を出す企業、つまり公に規制は出来ないが入ってはいけない企業の求人を除けば
安定したまともな企業の求人はそもそもどちらも少ない
と知りました。であれば成績目当てでがむしゃらに勧められないほうがむしろ間違いは少ない。
年収の安い仕事しかないというのは職安の頃の印象が根強く残っており、現在も日払いの仕事から正社員まで取り扱いが幅広いためです。
また派手な宣伝広告の効果も大きい、民間のほうに良い仕事が集まっているように感じさせます。
求人する企業の側でいえばハローワークへの求人出稿は民間業者に比べはるかに安い、つまり出稿しないのは損得が合わない。
かつては企業側も民間のほうが良い人材が集まると考えハローワークには出さなかったのですが、効果に大差がないので両方に出しているというのが現状です。
堅実経営・現状維持で行こうとする企業-つまり狙い目の会社-にはコストを掛けて民間業者に求人を出してもイメージが地味ゆえ集まらない、と諦めハローワーク専門で出しているところもあります。
◆雰囲気でめちゃくちゃ損をしているが、使いこなせば・・・
それでもハローワークと聞くと就職先が無くて悩んでいる方であっても皆さん一様に「いや、それは・・・?」という顔をされます。
気持ちは理解できます、行くとわかりますがなんとはなしに不景気な雰囲気がありますから。
拠点によっては失業手当の受給も同じ場所で行われていますから明るくハッピーな空気はない。
相談も日当払いの仕事から正社員まで幅広く、何から何まで「就活・転職サイト」「就職エージェント」のスマートな雰囲気とはかけ離れている。
ご担当者の皆さんも大手担当者のような滑らかな語り口ではありません、地味なご説明がとつとつと続きます。
そもそも転職や就活時はたいていちょっとさみしい気持ちでしているもの
うまく行くのか?
いい会社に巡り会えなかったらどうしよう?
これまでは書類も面接もダメだった、など。
こういう気持ちのとき、あの雰囲気は厳しいという気持ちはよくわかります、この点でハローワークには行きたくないという方も多いです。
私も実感して参りました、さんざん通いましたから。
しかしながらあえてこの際、実(じつ)を取って頂くことをお勧めしています。
それと独特の親切さにも気づいて頂きたい。
例えばハローワークには障害のある方やメンタル面で不調の方向けの相談窓口も整備されています、窓口がない拠点でも障害のある方向けの案件紹介をしています。
つまり窓口ご担当は全ての相談分野を経験されている訳で、これは民間ではあまりありません。
相談者が落ち込んでいる時の対応にこれが現れます、多くのご担当者が「まず話を聞く」ことに専念しています。これはあるようでなかなか受けられない対応です。
ここまでは民間とハローワークの本質的な違いです。
ご覧いただいた方の中にはそれでも民間ならではのスキルを期待されることと思います。
またハローワークで不愉快な体験をしたという方も多くいらっしゃる。
間違ってはいないのですが、そもそもハローワークの本来の機能についてご存知でない方も少なくないのではないかと。
ここは親切な代わりに「使いこなし」を求められる場所です。
成績目当てにゴリ推しをしない代わり、坦々とデータを提示するだけなのです、そのデータが貴重なのですが。
別途詳細をまとめてUP致します。
なお私自身はこれまでハローワークと転職エージェントの両方にお世話になっています。
人材斡旋業界の名誉のために申し上げると、優れた転職エージェントのサポートは大したものでその時のご対応には未だ感謝しています。
私の面倒を見てくださったご担当(最大手に所属)の方は、説明も明快かつ論理的でしたが肝心なところはプラス大変厳しく接される方でした。
『転職(就活)はゴールじゃない、そこから始まる』
『資質は関係ない、幾つになろうが諦めずプロとして能力を磨け。結局それしかない』
というアドバイスを繰り返し頂きました。
最近は手法がスマートになった分そういう方は少なくなったようです。
ちょっと残念に思っております。